ニュースで毎日のように聞く「国の借金1200兆円」「過去最大の補正予算」。でも、「なんだか難しそうだし、自分には関係ないかな」と、ついチャンネルを変えてしまっていませんか?
実は、それはとてももったいない!なぜなら、政府のお財布事情は、私たちの「給料」が上がるか下がるか、「貯金」の価値が守られるか、そしてスーパーで買う「卵の値段」にまで、直接つながっているからです。
この記事では、人気経済ジャーナリストである私が、政府の経済政策を理解するための超重要用語5つを、皆さんのご家庭の「家計簿」に例えながら、どこよりも分かりやすく解説します。この記事を読み終える頃には、ニュースの裏側にある本当の意味を理解し、ご自身の資産を守り、未来を賢く生き抜くための「お金の羅針盤」を手に入れているはずです。
① 政府の家計簿は真っ赤っか?「財政赤字」の基本
まず、一番の基本となるのが「財政赤字」です。これはシンプルに、政府の「家計簿が赤字」である状態を指します。
私たちの家計で考えてみましょう。毎月の収入(お給料)よりも、支出(生活費や家のローン返済など)の方が多かったら、それは「赤字」ですよね。政府もこれと全く同じです。政府にとっての収入は、主に私たちが納める「税金(税収)」。支出は、道路や橋を作る「公共事業」や、年金・医療などの「社会保障費」です。
この収入(税収)よりも支出(歳出)が上回ってしまった状態、それが「財政赤字」です。今の日本は、少子高齢化で社会保障費がどんどん膨らむ一方、なかなか税収が増えないため、長年この財政赤字の状態が続いています。いわば、毎月お給料以上に使ってしまう家計が、ずっと続いているようなものなのです。
② 赤字の穴埋めはどうする?政府のローンカード「国債」
さて、家計が赤字になったら、皆さんはどうしますか?多くの場合、「貯金を取り崩す」か、「どこかからお金を借りる」のではないでしょうか。政府も同じです。財政赤字という穴を埋めるために、政府は「国債(こくさい)」というものを発行してお金を借ります。
国債は、政府が発行する「借金の借用書」のようなものです。「この国債を買ってくれたら、毎年〇%の利子を付けて、満期が来たら元本をお返しします」と約束し、主に銀行や保険会社、そして日本銀行(日銀)に買ってもらいます。こうして政府は、当面の支出に充てるお金を調達しているのです。
しかし、これはあくまで「借金」です。借金をすれば、当然「利子」を支払わなければなりません。国債の残高が増え続けると、政府が支払う利子の額も雪だるま式に増えていきます。そして、その利払いの原資は、将来の私たちが納める税金なのです。つまり、今の赤字のツケを、未来の世代に先送りしている構造になっています。
③ 景気回復の切り札?「財政出動」と臨時ボーナス「補正予算」
では、なぜ政府は借金をしてまでお金を使うのでしょうか。その大きな理由の一つが「財政出動」です。これは、景気が悪い時に、政府が意図的にお金を使うことで、世の中の景気を良くしようとする政策です。
例えば、不景気でモノが売れない時、政府が大規模な公共事業(新しい道路や橋の建設など)を発注すれば、建設会社の仕事が増え、そこで働く人たちの給料が上がります。また、国民に給付金を配れば、みんなが買い物に出かけて、お店が潤います。このように、政府が支出を増やす(または減税する)ことで、世の中のお金の巡りを良くするのが財政出動の狙いです。
そして、この財政出動は、年度の途中で行われることもよくあります。当初の予定(予算)にはなかった、大規模な災害やパンデミックなど、予期せぬ事態に対応するためです。そのために組まれるのが「補正予算」です。家計で言えば、「急にエアコンが壊れたから、臨時でローンを組んで買い替える」ようなもの。コロナ禍での国民一律10万円給付金などは、この補正予算によって実行されました。
財政出動や補正予算は、経済のカンフル剤として効果を発揮することがありますが、その財源の多くは新たな国債発行(借金)で賄われるため、財政赤字をさらに拡大させるという副作用も持っています。
④ 健康診断でチェック!財政の健全性を見る「プライマリーバランス(PB)」
ここまで読んで、「借金だらけで、日本の財政は大丈夫なの?」と不安に思った方もいるでしょう。その財政の「健康状態」をチェックするための重要な指標が「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」、略して「PB」です。
これは、政府の家計簿から「過去の借金(国債)の元本返済や利払い」を除いた上で、その年の収入(税収など)と支出(政策的な経費)が釣り合っているかを見る指標です。
家計で例えると、「家のローンの返済を除いた、毎月の給料と生活費の収支」のこと。もし、このPBが赤字(プライマリーバランス・赤字)なら、それは非常に危険なサインです。過去のローンの利払いだけでなく、その月の生活費すら給料で賄えず、新たな借金(カードローンなど)で補っている状態だからです。これでは借金は減るどころか、加速度的に増えていってしまいますよね。
現在の日本は、このプライマリーバランスが長年赤字続きです。政府は「PBの黒字化」を目標に掲げていますが、その道のりはまだ遠いのが現状です。
私たちの生活への影響MAP
では、これらの政府の財政運営は、具体的に私たちの生活にどう影響するのでしょうか?
【メリット(短期的・限定的な影響)】
- 景気・雇用:財政出動による公共事業で、一時的に建設業界などの雇用が創出されることがあります。給付金などの支援策は、短期的な消費を後押しします。
- 住宅ローン:政府が大量の国債を発行し、それを日銀が買い支える金融緩和が続く間は、市場金利が低く抑えられ、住宅ローンなどを低金利で借りやすい状況が続きます。
【デメリット(長期的・構造的な影響)】
- 将来の負担増:積み上がった国債を将来返済していくためには、消費税などの「増税」や、年金・医療費の自己負担増といった「社会保障の削減」につながる可能性があります。
- 預貯金の価値目減り:財政赤字の穴埋めのために通貨を大量に発行すると、インフレ(物価上昇)が起きやすくなります。物価が上がると、同じ1万円で買えるモノが少なくなるため、銀行に預けているお金の実質的な価値は下がってしまいます。
- 輸入品の値上がり:国の財政に対する信頼が失われると、日本円の価値が下がる「円安」が進みます。円安になると、海外から輸入しているガソリンや小麦、トウモロコシなどの価格が上昇し、電気代や食料品など、生活必需品の値上がりとなって家計を直撃します。
歴史に学ぶ、過去の失敗と日本の今
日本の財政がここまで悪化したのは、1990年代のバブル崩壊が大きな契機でした。景気の落ち込みに対し、政府はカンフル剤として公共事業を中心とした大規模な財政出動を繰り返しました。しかし、経済は思うように回復せず、巨額の国債残高だけが残ってしまいました。その後も、リーマンショックや東日本大震災、そして近年のコロナ禍と、日本は大規模な補正予算を伴う財政出動を繰り返してきました。
その結果、国の借金はGDP(国内総生産)の2倍以上に膨れ上がり、これは先進国の中でも突出して高い水準です。今は日銀が国債を大量に買い入れているため、金利は低く抑えられていますが、この「異次元の状況」がいつまでも続く保証はどこにもありません。歴史を振り返ると、財政規律を失った国の通貨価値は暴落し、激しいインフレ(ハイパーインフレ)に見舞われるという教訓が数多く存在します。
まとめ:未来を生き抜くための経済リテラシー
今回は、政府の経済政策を読み解く上で欠かせない5つのキーワードを解説しました。最後に、今日のポイントをまとめましょう。
- 政府の収入不足が「財政赤字」。
- 赤字は「国債」という借金で賄われる。
- 景気対策の「財政出動」や「補正予算」は、さらに借金を増やす。
- 財政の健康診断書が「プライマリーバランス(PB)」。日本のPBは赤字続き。
- このツケは、将来の「増税」や「物価高」として私たちの生活に跳ね返ってくる。
これからは、ニュースで「大型補正予算が成立」「国債を〇〇兆円増発」といった言葉を耳にしたら、ぜひこう考えてみてください。「そのお金は、何のために、誰のために使われるのか? そして、その借金は、将来の私たちや子供たちの世代にどのような影響を与えるのか?」と。
この視点を持つことこそが、不透明な時代を賢く生き抜き、あなた自身と大切な家族の未来の家計を守るための、最強の「経済リテラシー」となるのです。
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