「有名企業だから、きっと大丈夫だろう」「株価が上がっているから、今が買い時だ!」…そんな風に、雰囲気だけで株を選んでしまい、気づけば資産が目減りしていた…。これは、投資を始めたばかりのAさんが実際に経験した失敗談です。Aさんは、企業の本当の価値を測る「モノサシ」を持っていなかったため、高値で株を買い、その後の下落に巻き込まれてしまいました。
もし、あなたがこの記事を読む前にAさんと同じような状況なら、それは大きなチャンスです。なぜなら、これからご紹介する5つの重要用語は、企業の健康状態や成長の可能性を映し出す「会社の成績表」のようなものだからです。この「モノサシ」を手に入れれば、あなたはもう雰囲気で投資することなく、まるで宝探しのように、世の中に埋もれた「お宝株」を自分の力で見つけ出せるようになるでしょう。一生使える株式投資の武器を、ここで手に入れてください。
1. PER(株価収益率)- 会社の「人気度・割安度」メーター
PERとは、今の株価が、その会社の「1株あたりの利益」の何倍になっているかを示す指標です。簡単に言えば、投資した金額を、その会社の利益で何年で回収できるかという目安になります。
【たとえ話】人気のラーメン屋さん
ここに、年間100万円の利益を出すラーメン屋さんがあるとします。このお店が1,500万円で売りに出されていたら、あなたはどう思いますか?「15年で元が取れる計算か…」と考えますよね。この「15年」というのがPER「15倍」のイメージです。もし、同じ利益の別の店が1,000万円で売られていたら、PERは「10倍」。こちらのほうが割安に感じませんか?
【超図解】PERの仕組みをビジュアルで理解する
PERは、以下の計算式で求められます。EPS(1株当たり純利益)については後ほど詳しく解説します。
- 計算式: 株価 ÷ 1株当たり純利益(EPS) = PER(単位:倍)
- イメージ図:
株価 [1,500円] ←→ 利益 [100円/株]
↓
[株価]は[利益]の何倍? → 答え:15倍(PER)
一般的に、PERが低いほど株価は「割安」、高いほど「割高」と判断されますが、IT企業のように将来の成長が期待される会社は、利益に対して株価が高く評価され、PERが高くなる傾向があります。
実践シミュレーション:2つの会社をPERで比較してみよう
A社(急成長中のIT企業):
- 株価:3,000円
- 1株当たり純利益(EPS):100円
- PER:30倍 (3000 ÷ 100)
- 評価:将来への期待が高く、人気がある状態。
B社(安定経営の食品メーカー):
- 株価:1,200円
- 1株当たり純利益(EPS):120円
- PER:10倍 (1200 ÷ 120)
- 評価:株価が利益に対して割安な水準にある可能性。
2. PBR(株価純資産倍率)- 会社の「解散価値」メーター
PBRとは、今の株価が、会社の「1株あたりの純資産」の何倍になっているかを示す指標です。純資産とは、会社の総資産から負債(借金など)を差し引いたもので、「会社の本当の財産」のこと。万が一、会社が今解散した場合に株主の手元に残る価値から、株価の割安度を測ります。
【たとえ話】中古住宅の価値
土地と建物の価値を合計すると2,000万円になる中古住宅があるとします。この家の純粋な資産価値は2,000万円です。もしこの家が2,000万円で売られていればPBR1倍。妥当な価格です。しかし、もし何らかの理由で1,500万円で売られていたら、PBRは0.75倍。資産価値から見れば「お買い得」と言えますよね。
【超図解】PBRの仕組みをビジュアルで理解する
PBRは、会社の純資産(=解散価値)と時価総額(株価×発行済株式数)を比べることで計算されます。
- 計算式: 株価 ÷ 1株当たり純資産(BPS) = PBR(単位:倍)
- イメージ図:
会社の財産(ビル、現金など) - 借金 = 純資産(解散価値)
↓
この[純資産]に対して、今の[株価]はどれくらい?
PBRが1倍を下回ると、株価がその会社の解散価値よりも安い状態を意味し、株価の底値の目安として注目されることがあります。
実践シミュレーション:PBR1倍割れの会社を見てみよう
C社(多くの工場を持つ製造業):
- 株価:800円
- 1株当たり純資産(BPS):1,000円
- PBR:0.8倍 (800 ÷ 1000)
- 評価:会社の純資産価値よりも株価が安い「PBR1倍割れ」の状態。市場から過小評価されている可能性があります。
3. ROE(自己資本利益率)- 「お金の稼ぎ方の上手さ」メーター
ROEとは、株主が出したお金(自己資本)を使って、会社がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す指標です。ROEが高いほど、「お金を稼ぐのが上手い会社」と言えます。
【たとえ話】2人のパン職人
ここに、元手100万円でパン屋を始めたAさんとBさんがいます。1年後、Aさんは10万円の利益を出しました(ROE 10%)。一方、Bさんは同じ元手で20万円の利益を出しました(ROE 20%)。どちらの職人さんにお金を預けて、もっとお店を大きくしてほしいと思いますか?きっと、より効率よく利益を出したBさんですよね。
【超図解】ROEの仕組みをビジュアルで理解する
ROEは、株主からのお金(自己資本)が、どれくらいの利益(当期純利益)を生んだかを見る指標です。
- 計算式: 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 = ROE(単位:%)
- イメージ図:
株主のお金 [自己資本] → 会社の事業活動 → 生まれた利益 [当期純利益] ↓
元手に対して、どれだけの利益を稼げた?
一般的に、ROEが8%~10%を超えていると、株主のために効率よく利益を生み出せる優良企業と判断されることが多いです。
実践シミュレーション:ROEで会社の収益力をチェック
D社(効率経営の優良企業):
- 自己資本:1,000億円
- 当期純利益:150億円
- ROE:15% (150 ÷ 1000 × 100)
- 評価:株主の資本を非常に効率的に使って高い利益を上げている、収益力の高い会社と判断できます。
4. 配当利回り - 株がくれる「お小遣い」メーター
配当利回りとは、株価に対して1年間でどれくらいの配当金を受け取れるかを示す割合です。株価の値上がり益(キャピタルゲイン)とは別に、定期的にお金を受け取れるインカムゲインを重視する投資家にとって重要な指標です。
【たとえ話】家賃収入が得られるマンション投資
1,000万円のマンションを購入し、年間30万円の家賃収入が得られるとします。この場合、利回りは3%ですよね。株式の配当もこれと似ていて、株(資産)を保有していることでもらえる「お小遣い」のようなものです。
【超図解】配当利回りの仕組みをビジュアルで理解する
配当利回りは、1株あたりの配当金を現在の株価で割って計算します。
- 計算式: 1株当たり年間配当金 ÷ 株価 × 100 = 配当利回り(単位:%)
- イメージ図:
投資額 [株価] → 保有 → 企業からのお礼 [配当金] ↓
投資額に対して、年間何%のリターンがある?
ただし、利回りが高いからといって安易に飛びつくのは危険です。業績が悪化して配当が減らされたり(減配)、なくなったり(無配)するリスクも考える必要があります。
実践シミュレーション:もし配当利回り4%の株に投資したら?
条件:
- 投資金額:100万円
- 配当利回り:4%
1年後にもらえる配当金: 100万円 × 4% = 40,000円
税引き後の手取り額(税率約20%): 40,000円 × 0.79685 ≒ 31,874円
※配当金はNISA口座で受け取れば非課税になります。
5. EPS(1株当たり純利益)- 会社の「1株の稼ぐ力」
EPSとは、会社が1年間で稼いだ最終的な利益(当期純利益)を、発行されている株式の数で割ったものです。「株1枚あたり、いくら利益を稼いだか」を示し、会社の収益力や成長性を測るための最も基本的な指標です。一番最初に解説したPERを計算するためにも使われます。
【たとえ話】大きなピザの分け前
会社全体の利益を大きな一枚のピザだと考えてみてください。そして、株主をピザを食べる人たちとします。EPSは、このピザを参加人数(発行済株式数)で切り分けたとき、「1人分のピザの大きさ」を表します。ピザが大きくなる(利益が増える)か、食べる人が少なくなる(自社株買いで株数が減る)と、一人当たりの分け前(EPS)は増えますよね。
【超図解】EPSの仕組みをビジュアルで理解する
EPSは企業の成長性を測る上で非常に重要です。
- 計算式: 当期純利益 ÷ 発行済株式数 = EPS(単位:円)
- イメージ図:
会社全体の利益 [1億円] ÷ 全ての株の数 [100万株] = 1株の稼ぐ力 [EPS 100円]
EPSが年々増えている(成長している)会社は、株価も上昇しやすい傾向にあります。
実践シミュレーション:EPSの成長で未来を予測する
E社(成長中の企業):
- 2022年のEPS:80円
- 2023年のEPS:100円(前年比25%増!)
- 2024年のEPS予想:120円
評価: このようにEPSが毎年順調に伸びている会社は、事業がうまくいっており、株主への還元も期待できる成長企業と判断できます。PERが同じなら、EPSが成長すれば株価の上昇が期待できます。
まとめ:今日から覚えるべき最重要ポイント
お疲れ様でした!5つのモノサシを学び、あなたはもう投資家として大きな一歩を踏み出しました。最後に、今日の最重要ポイントを3つだけ復習しましょう。
- ポイント1:会社の価値は多角的に見よう!
PER(割安度)、PBR(資産価値)、ROE(収益効率)など、複数のモノサシを組み合わせることで、企業の本当の姿が見えてきます。一つの指標だけで判断するのは危険です。 - ポイント2:数字の背景を考えよう!
「PERが高いのはなぜ?」「ROEが低い理由は?」など、数字の裏側にあるストーリー(業界の特性、会社の成長段階など)を想像することが、分析力を高めるカギになります。 - ポイント3:まずは気になる会社を調べてみよう!
知識は使ってこそ武器になります。あなたが普段使っている商品やサービスの会社を、今日学んだ指標で調べてみてください。きっと新しい発見があるはずです。
免責事項
本記事で提供される情報は、教育および情報提供を目的としたものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。記載された内容は、記事作成時点での情報に基づいています。
また、本記事は特定の金融商品の購入や売却を推奨、勧誘するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。