マーケットニュース

2025年11月11日(火)、おはようございます。昨日の海外市場の動きを振り返る「マーケット概況」です。

昨日の米国株式市場は、主要3指数ともに小幅な値動きに終始しました。市場は、根強いAIブームへの期待感と、長期化する政府機関の一部閉鎖による経済指標発表の遅延という不透明感との間で揺れ動いています。10月はS&P 500、ナスダック、ダウ平均が堅調な上昇を見せましたが、11月に入りやや警戒感も台頭。特に、11月の雇用統計がマイナスに転じる可能性が指摘されており、景気後退懸念がくすぶっています。一方で、FRB(連邦準備制度理事会)は10月に利下げを実施したものの、パウエル議長は12月の追加利下げへの過度な期待を牽制しており、金融政策の先行き不透明感も相場の重しとなっています。為替市場では、FRBの利下げサイクル入り観測から長期的なドル安トレンドが意識され始めています。総じて、強気なセンチメントは維持されつつも、複数の懸念材料が上値を抑える神経質な展開が続いています。

AIバブルは来るのか?ゴールドマン・サックスが分析する「ドットコムバブルとの違い」

世界中の投資家を熱狂させているAIブーム。その勢いは留まることを知らず、関連銘柄の株価は急騰を続けています。しかし、この熱狂ぶりを見て、1990年代後半の「ドットコムバブル」を思い起こし、警戒感を強める声も少なくありません。そんな中、大手投資銀行ゴールドマン・サックスは興味深い分析を発表しました。彼らは現在のAIブームとドットコムバブルとの類似性を認めつつも、決定的な違いがあると指摘しています。その根拠は、現時点ではマクロ経済や市場全体のファンダメンタルズに大きな不均衡が見られない点です。ドットコムバブル期には、過剰な投資や非現実的な収益予測が横行しましたが、現在のAI関連企業は、既に具体的な収益を上げ始めているケースも多く、実体を伴った成長であるとの見方です。しかし、ゴールドマン・サックスは、現時点ではバブルではないとしながらも、投資家の過度な楽観論には釘を刺しており、今後の金利動向や企業収益次第では状況が変わりうるとし、リスクへの警戒を促しています。

静かなる時限爆弾?米国のオフィスビル、債務不履行率が金融危機超え!

AIブームに沸く華やかな株式市場の裏側で、静かに深刻な問題が進行しています。それは、米国のコマーシャル不動産(CRE)市場の危機です。最新のデータによると、特にオフィス物件の債務不履行率が、2008年の金融危機のピーク時を上回るという憂慮すべき事態に陥っています。さらに、集合住宅(マルチファミリー)の債務不履行率も倍増しており、問題はオフィス市場だけに留まりません。この背景にあるのは、FRBによる急激な利上げです。パンデミック以降のリモートワーク定着で空室率が上昇する中、高金利によって借り換えコストが急増し、多くの不動産所有者が資金繰りに窮しているのです。この問題は、4.8兆ドル(約720兆円)という巨大な市場規模を持つだけに、万が一危機が本格化すれば、融資を行っている地方銀行を中心に金融システム全体へと波及するリスクをはらんでいます。今後の金利動向と不動産市況から目が離せません。

米中雪解けムード?「港湾料停止」の裏で激化する半導体戦争の行方

世界経済の二大巨頭である米国と中国の関係に、変化の兆しが見えています。両国は2025年11月10日から1年間、港湾サービス料を相互に停止することで合意しました。これは、両国間の海上輸送コストを削減し、貿易関係の安定化を目指す動きであり、市場からはポジティブなサインとして受け止められています。実際、中国が香港で発行した人民元建て国債には海外投資家から強い需要が集まり、投資家心理の改善を示唆しました。しかし、この「雪解けムード」を手放しで喜ぶのは早計かもしれません。水面下では、経済安全保障の要である半導体分野を巡るハイテク戦争が、むしろ激化の一途をたどっているからです。米国による先端半導体技術の対中輸出規制に対し、中国も対抗措置を辞さない構えを見せており、貿易やサプライチェーンの「兵器化」という根深い対立構造は依然として市場の大きなリスク要因となっています。表面的な協調と、核心部分での対立という二面性が、今後の世界経済の不確実性を高めています。

10兆円超の経済対策と迫る追加利上げ!日本市場の二大エンジンを徹底解剖

日本市場に目を向けると、今後の方向性を占う上で重要な2つの動きが同時に進行しています。一つは、高市早苗首相が主導する大規模な経済対策です。インフレ抑制と経済成長を両立させるため、11月下旬までに10兆円を超える補正予算を成立させる計画で、特にAIや半導体といった先端技術への重点的な投資が盛り込まれる見込みです。これは、関連企業の業績向上期待を通じて、株式市場の支援材料となるでしょう。実際に、東証プライム上場企業の約4割がAI需要を背景に業績予想を上方修正しており、期待感は高まっています。その一方で、もう一つの動きが金融引き締めです。先日発表された11月分の東京のコアCPI(消費者物価指数)が、エネルギー価格の上昇を主因に前月から伸びが加速しました。この根強いインフレ圧力は、日本銀行が12月の金融政策決定会合で追加利上げに踏み切る可能性を強く示唆しており、市場では警戒感が高まっています。景気刺激策というアクセルと、金融引き締めというブレーキがどう作用するのか、投資家は難しい判断を迫られることになります。

世界経済は「不安定」な状況へ。粘着質インフレと地政学リスクの二重苦

世界経済は、多くの株式市場が史上最高値圏で推移するという活況の裏で、「precarious(不安定)」な状況に直面しています。その最大の要因は、依然として高止まりする「粘着質」なコアインフレです。各国中央銀行が利上げを続けても、サービス価格などを中心にインフレがなかなか収まらず、企業収益を圧迫し続けています。さらに、労働市場にも冷え込みの兆しが見え始め、スタグフレーション(景気後退とインフレの同時進行)への懸念も燻っています。こうしたマクロ経済の逆風に加えて、地政学的な緊張の高まりが投資家心理を悪化させています。米中対立の構造的な問題や、各地で頻発する紛争は、サプライチェーンの混乱やエネルギー価格の高騰を通じて、世界経済に直接的な打撃を与えます。多くの株式市場が史上最高値を更新している華やかな状況とは裏腹に、水面下ではテールリスク(発生確率は低いが起きた場合の影響が甚大なリスク)が増大していることを、投資家は常に意識しておく必要があります。

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