昨日のマーケット概況(2025年10月14日)
昨晩10月14日の米国市場は、FRBのハト派的な金融政策への期待と、米中貿易摩擦の再燃という相反する材料が交錯し、主要指数はまちまちな動きとなりました。ダウ平均株価は小幅に上昇したものの、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は下落して引けています。FRBのパウエル議長が、労働市場の鈍化を理由に年内追加利下げの可能性を示唆したことが相場の下支えとなりました。これを受け、米長期金利は低下し、金利に敏感な景気敏感株や高配当株には買いが入りました。一方で、米国が中国製品への関税を大幅に引き上げる方針を示唆し、中国側も報復措置を発表したことで、地政学リスクへの懸念が再燃。特にグローバルなサプライチェーンに依存する半導体関連などのテクノロジー株には強い売り圧力がかかりました。為替市場では、米国の利下げ観測を背景にドルがやや軟調に推移。ドル円は日銀の金融政策正常化への思惑も絡み、一進一退の展開となりました。総じて、中央銀行による緩和的な金融政策への期待が市場のセンチメントを支える一方で、激化する米中対立が上値を重くするという、典型的な綱引き相場が続いています。
【朗報?】FRB、年内追加利下げを示唆!市場はハト派姿勢を歓迎
FRBのパウエル議長は14日の講演で、労働市場の鈍化傾向をリスク要因として挙げ、インフレ抑制と雇用の最大化のバランスを取るため、年内にさらに2回の0.25%利下げを行う可能性が高いとの見解を示しました。この発言を受け、市場では10月29日に開催されるFOMCでの利下げ確率がほぼ100%織り込まれる状況となっています。さらに、FRBが保有資産を減らす「量的引き締め(QT)」の停止も検討していることが報じられ、市場への流動性供給を重視する姿勢が鮮明になりました。このハト派的なスタンスは、株式市場にとって短期的には追い風です。金利低下は、特に将来の成長性が期待されるグロース株の株価評価(バリュエーション)を高める効果があります。しかし、この政策転換の背景には、米国経済の減速懸念があることを忘れてはなりません。パウエル議長のハト派的なスタンスは、短期的に株式市場の下支え要因となるものの、その背景にある労働市場や景気の減速懸念が今後のリスクとして意識されます。投資家は、金融緩和という「アメ」と、景気後退という「ムチ」を天秤にかけながら、慎重な舵取りを求められる局面と言えるでしょう。
【再燃】米中対立、再び緊張状態へ!テクノロジー株に激震
市場の緩和期待に冷や水を浴びせたのが、米中貿易摩擦の再燃です。米国政府が、半導体や電気自動車(EV)など一部の中国製品に対し、関税を最大100%に引き上げるという強硬策を示唆しました。これに対し中国は即座に反発し、米国関連企業への制裁や、米国からの輸入品が経由する港湾の手数料を課徴金として引き上げる報復措置を発表。両国の対立は一気に緊迫化しました。このニュースは株式市場を直撃し、特に中国市場への依存度が高いアップルや、半導体大手のNVIDIAといったテクノロジー株が大きく売られました。サプライチェーンの分断や、中国での売上減少といった懸念が現実味を帯びてきたためです。トランプ大統領の言説のトーンによっては市場が一時的に落ち着きを取り戻す場面もありますが、対立の根は深く、選挙をにらんだ動きが続く可能性は高いでしょう。米中間の地政学リスク再燃は、世界経済の不透明感を一気に高め、特にグローバルなサプライチェーンに依存するハイテク企業や輸出関連企業にとって深刻な脅威となります。
日銀、10月利上げは幻に?高市新総裁で金融政策の行方は
日本の金融市場では、根強いインフレ圧力と賃金上昇の兆しを背景に、日銀が10月29-30日の金融政策決定会合で追加利上げに踏み切るとの観測が高まっていました。しかし、先日の総裁選で、ハト派的な金融政策スタンスを持つとされる高市早苗氏が勝利したことで、市場の雰囲気は一変しました。市場では、10月の利上げは見送られ、早くとも来年1月以降に先送りされるとの見方がコンセンサスとなりつつあります。一方で、日銀はすでにETFやREITの新規購入を停止するなど、量的緩和策の縮小(テーパリング)は着実に進めています。金融政策の「正常化」という大きな方向性は変わらないものの、そのペースが緩やかになる可能性が出てきたということです。高市氏の総裁就任という政治的な変数が加わったことで、日銀の金融政策正常化のタイミングに不透明感が増しており、市場は当面その舵取りを注視することになります。今後の金融政策や為替の動向を占う上で、新総裁の発言がこれまで以上に重要となるでしょう。
【欧州の憂鬱】インフレ高止まりと景況感悪化のジレンマ
欧州では、経済の難しい舵取りが続いています。14日に発表されたユーロ圏の9月消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.2%となり、欧州中央銀行(ECB)が目標とする2.0%を再び上回りました。エネルギー価格の上昇が主な要因ですが、サービス部門のインフレ圧力も依然として根強く、ECBの利下げ判断を難しくさせています。その一方で、同日発表された10月のZEW景況感指数は5ヶ月ぶりの低水準に沈みました。特にフランスの財政問題が重荷となり、企業の景況感が悪化していることが示されました。つまり、ECBは「インフレは高いが、景気は悪い」というスタグフレーションに近い状況に直面しているのです。ECBは、目標を上回るインフレと悪化する景況感という二律背反の課題に直面しており、今後の金融政策運営は極めて困難なものとなるでしょう。このジレンマは、ユーロ相場や欧州株式市場の不安定要因として、今後もくすぶり続ける可能性があります。
米中対立の裏で…中国、9月貿易黒字が予想超えの強さを見せる
米中対立の激化が報じられる中、中国経済の底堅さを示すデータも発表されています。13日に発表された中国の9月の貿易統計では、貿易黒字が904.5億ドルと市場予想を上回りました。注目すべきは、輸出が前年同月比で8.3%増、輸入も同7.4%増と、ともに堅調な伸びを示した点です。これは、中国国内の需要が回復しつつあることを示唆しています。内容を詳しく見ると、米国への輸出は減少しているものの、ASEAN諸国など他国への輸出を増やすことで全体をカバーしている構図が見えてきます。これは、米中間のデカップリング(経済的な切り離し)が進む一方で、中国が新たなサプライチェーンの構築を進めている証左とも言えます。米国との貿易摩擦が激化する中でも、中国が輸出先の多角化によって堅調な貿易統計を維持している点は、世界経済の構造変化を示唆しています。この強さが持続可能なものか、今後の世界経済の動向と合わせて注視していく必要があります。
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